『幸せを運んだ人形たち』
~人権教育参観日より~
南部中学校 校長 黒見隆久
先日(22日)、人権教育参観日を行いました。本校は鳥取県教育委員会から「豊かな人権文化を築く学校づくり事業」の指定を受け、学校・家庭・地域が連携・協働して人権教育に取り組むプログラムをつくってきました。
「部落差別(結婚差別)」、「性的マイノリティ」、「ストレスとのつきあい方」などをテーマにした授業公開とともに、徳島県から『箱まわし保存会』の方々をお招きし、『阿波木偶「まわし」・「箱廻し」』の公演を行いました。
「三番叟まわし」とは、徳島・四国を代表する「門付け芸」です。数体の木偶(木造の人形)を二つの木箱に入れ、で担いで家々を回り、家内安全、無病息災、五穀豊穣、商売繁盛などを祈ります。木偶を操りながら舞い、正月、各家々に福を呼ぶ、幸せを運ぶ、その土地の人々にとってなくてはならない伝統芸能です。しかし、その「門付け芸」が「部落差別」によって消滅の危機を迎えます。被差別部落の人たちによって永年受け継がれてきた伝統や技、貴重な木偶は、部落差別によって失われようとしていました。差別を恐れた結果です。
人々に福や幸せを運ぶ三番叟まわしが、差別によってその伝統と歴史、その価値すら奪われるなんて理不尽はありません。
そんな部落差別の不合理さ、被差別部落の人々が担った大きな役割があること、伝統文化の伝承・継承に力を尽くす人たち、差別のない平和な世の中をつくろうとしている人たちがいることを、この公演を通して感じてほしいと思いました。
差別は「された人」、「した人」、「知らんふりをした人」・・・みんなが不幸になります。差別とどう向き合っていくか・・・?それが人間の価値になるのだと思います。3年生の感想の中にこんなのを見つけました。
「新しい差別の芽を出さない人になりたい。自分が今ある差別をなくしたり、減らしたりはできないかも知れないけど、新しい差別をつくらないことはできるから・・・。」
私たちも阿波木偶のように、幸せを運べる人になりたいですね。